2017年8月23日水曜日

(K0114) 人災と天災(悲嘆の歴史受け止める風土) / 「寄り添う」(1) <臨死期>


 グリーフケアは、親しい人との死別などの喪失体験によって生じる深い悲しみから立ち直る支援を指す。災害や医療の現場で、被災者や患者のケアを宗教者が担うケースが増えている。

 平成17425日、兵庫県尼崎市で乗客106人が死亡したJR福知山線脱線事故。人災は天災と異なって明確な加害者がいるだけに、被害者は怒りが次々とわいて、苦しむ。それは今年6月、検察審査会の議決を経て強制起訴されたJR西の歴代3社長の無罪が確定しても、変わることはない。

 JR西日本の幹部から相談を受けた、グリーフケアの第一人者で知られるカトリック修道女(シスター)の高木慶子さんは、「悲嘆について学ぶ講座を始めてはいかがですか」と企画・提案し、平成1910月、現場近くの聖トマス大(当時)で公開講座が始まった。

 講座を始めた当時、高木さんは「JR西の片棒を担ぐのか」という遺族からの批判を覚悟した。しかし定員300人に2倍以上の申し込みがあった。

 

 関西では、7年の阪神大震災に続いて9年に神戸連続児童殺傷事件、13年には大阪教育大学付属池田小事件が起きた。これらは社会を震撼させただけでなく、「なぜこんなに苦しまねばならないのか」問わずにはいられない人々を増やした。

 「関西には、悲嘆の大切さを受け止める文化がある」。これが高木さんの導き出した持論だ。

 

 「悲嘆は死別が原因とは限らない」「思い通りにはならないことで生じる喪失感は、日常生活に山ほどある」「悲嘆について学ぶのは、人を支えるため。知らないことほど、恐ろしいことはありませんから」と高木さんは指摘する。

 

出典
「関西の力」/「第6部 祈り」/「第1章 寄り添う」/「第1項 人災と天災」
産経新聞(2017/08/14 夕刊)
添付写真は、ここから。

 


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